ここは留学時代、食材を求めて通った懐かしい場所ですが、買い出しの度に私が足しげく通ったのは手作りの刺繍作品を売る店でした。
顔なじみの女性は今も当時と同じところで店を構え、遠い日本から来た旅人を暖かく迎えてくれました。
まず目を引いたのは、ある年号と短い文が縫い込められた作品でした。店主のお母さんが作ったというこの作品には「1948 この花は枯れない。」と刺繍されていました。
1948年は旧ユーゴスラビアが戦後独自の道を進み始めた年です。
慎ましく暮らす農家の主婦の強い意思が、美しい色彩と共に伝わってくるような気がします。


